
米国18州がSECを共同提訴、双方の勝算はいかに(上)
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米国18州がSECを共同提訴、双方の勝算はいかに(上)
本稿はこの事件を中心に、米国における暗号資産業界の規制の動向を整理し、本件において18州がSECの規制に対して提起した具体的な訴えについて分析する。
執筆:TaxDAO
米国現地時間11月14日、ケンタッキー州が主導する18の州が、米証券取引委員会(SEC)およびその委員5名を相手取り、ケンタッキー州連邦地方裁判所に提訴した。訴因は、長年にわたる暗号資産に対する過剰な規制、暗号産業への不公平な迫害、そして米国憲法の違反である。これは、米国暗号産業が司法手段を通じて現行の厳格な規制体制に挑戦する新たな試みである。原告側が勝訴した場合、米国の判例法の伝統に従い、この判決は同国の暗号産業の規制枠組みに深い変化をもたらし、ひいては世界中の暗号産業にも影響を与える可能性がある。本稿では、この訴訟を中心に、米国における暗号産業の規制動向を整理し、18州が提起した具体的な訴えの内容を分析するとともに、2つの代表的な暗号企業とSECとの対立事例を比較検討し、本件の今後の展開と影響について考察する。
1. 米国暗号産業の規制動向
米国の暗号市場規模および影響力は、世界的に見ても圧倒的である。このような突出した地位は、米国の強固な経済基盤、大規模な人口、活発で高度に流動的な資本市場、そして先進的な技術革新能力に大きく起因している。また、比較的安定かつ規範的な市場環境、およびドルが国際金融システムの主要準備通貨としての地位を持つことも、米国における暗号資産市場の持続的発展を支える土台となっている。Statistaが2024年7月に公表した調査データによると、2024年の世界の暗号通貨市場収益は567億ドルに達し、各国・地域別では米国が97.88億ドルと最も高く、世界トップの収益を見込む。
1.1 米国暗号産業の現行規制政策
米国連邦レベルにおいて、暗号資産の規制に重要な役割を果たすのは、商品先物取引委員会(CFTC)と証券取引委員会(SEC)である。米国の規制枠組みでは、暗号資産が「証券」(security)とされるか「商品」(commodity)とされるかが極めて重要となる。暗号資産が「証券」と分類されれば、株式や債券と同様に、SECの規制対象となる。証券発行者および証券取引を仲介するプラットフォームやブローカーは、「1933年証券法」と「1934年証券取引法」に従う必要がある。一方、暗号資産が商品またはそのデリバティブと見なされる場合は、金、石油、穀物などと同様に、「1936年商品取引法」(CEA)に基づき、CFTCの監督下に置かれる。
暗号資産は証券か商品か——これは、暗号業界と規制当局の間で長く議論されてきた核心的課題である。規制当局による暗号資産の定性に関する見解の不一致は、多重規制という状況を生み出し、SECとCFTCの間に長期にわたる管轄権の重複問題を引き起こしている。
SECの規制枠組みでは、「ハウイテスト」(Howey Test)を用いて、暗号資産が証券に該当するかどうかを判断している。2022年4月の講演で、SEC議長のゲーリー・ゲンスラー氏は、「偏見なく見て、大多数の暗号トークン(crypto tokens)はハウイテストに基づく投資契約(証券)に該当する……証券としての暗号トークンはSECに登録が必要であり、発行者はこれらの資産取引をSECに届け出て、関連する開示義務を遵守しなければならない」と述べている。実際の執行活動を見てみると、2013年以降、SECは暗号通貨企業および個人に対して74.2億ドル以上の罰金を科しており、そのうち63%(46.8億ドル)が2024年に発生している。2024年の巨額罰金の主な原因は、SECがTerraform Labs PTE, Ltd.および共同創業者のドゥ・クォン氏に対して行った執行措置であり、これは暗号通貨規制史上最大の罰金であり、先例を打ち立てたものである。
CFTCの規制枠組みでは、BTCやETHなどの暗号資産は「商品」として位置づけられている。CFTCの監督範囲には、暗号資産の現物市場およびデリバティブ市場が含まれるが、権限は異なる。CFTCはデリバティブ市場に対して完全な規制権を持ち、特に暗号資産の先物市場およびスワップ市場での取引活動に注目している。一方、現物市場については、CFTCの規制権は限定的であるが、詐欺や市場操作行為を取り締まる権限は有している。
全体的に見ると、SECは投資家保護を最優先とするため、リスク管理を重視する姿勢を示しているが、この規制スタンスは業界の一部から批判を受けている。過度に厳しい規制は、暗号プロジェクトに高額な法的・コンプライアンスコストを強いることとなり、業界の革新と発展を妨げるという指摘である。一方、CFTCは市場効率を重視し、業界自律と技術革新を支援する傾向にある。管轄権をめぐる争いに対応して、米国議会は2023年、「21世紀金融革新と技術法案」(Financial Innovation and Technology for the 21st Century Act、FIT21)を提出した。これは、より寛容な姿勢を持つCFTCに規制権を多く委ねることを示唆したものである。2024年5月、米下院は圧倒的多数でFIT21法案を可決したが、上院では棚上げされたままとなっている。
1.2 トランプ政権の将来の規制改革方向
2024年の米大統領選挙前、トランプ氏は繰り返し自身を「暗号通貨支持の大統領候補」としてアピールし、ビットコインを中心とする暗号産業に対して複数の公約を提示していた。第一に、「ビットコイン戦略備蓄」の創設、つまりビットコインを国家金融戦略に組み入れること。トランプ氏は2024年7月にナッシュビルで開催されたビットコインカンファレンスにて、「もし私がホワイトハウスに戻れば、国家戦略的暗号資産備蓄を開始し、暗号通貨にとって好意的な政策を推進する」と発言した。第二に、規制緩和と産業革新の促進。トランプ氏は、当選後に暗号産業に対して厳格な規制姿勢を取ってきたSEC議長のゲーリー・ゲンスラー氏を罷免すると約束したほか、国内の主要な業界関係者や参加者で構成される「暗号通貨諮問委員会」を設立し、政策および規制の策定を支援するとした。第三に、暗号通貨の採掘を支援し、米国を産業の主導国とすること。2024年6月、トランプ氏は非公開会合で「もし暗号通貨が未来を定義するのであれば、私はそれが米国で採掘され、鋳造され、製造されることを望む」と述べた。同年9月、ニューヨーク経済クラブでの演説でも、「米国を暗号通貨とビットコインの世界の首都にする」と明言した。さらに、暗号産業との和解の象徴として、ダークウェブマーケット「シルクロード」の創設者ロス・ウルブリヒト氏の釈放も約束した。もしウルブリヒト氏がトランプ政権のもとで釈放されれば、これは暗号産業と政府の和解の真のマイルストーンとなるだろう。
2024年11月、トランプ氏は次期米大統領に当選し、共和党も徐々に暗号産業への公約を実行に移している。まず、暗号産業支持派のSEC議長を指名した。2024年11月21日、SECは現職議長のゲンスラー氏が2025年1月20日に辞任することを発表。その後、12月5日、トランプ氏はポール・アトキンズ氏を次期SEC議長候補に指名した。アトキンズ氏が正式に就任すれば、暗号産業にとってより包括的な環境が整う可能性がある。次に、暗号産業に友好的な政権チームの構築。11月23日、トランプ新政権のすべての内閣長官候補が確定したが、その中には5人以上が暗号通貨に対して肯定的であり、自らの保有状況を公表している人物が含まれていた。さらに、Foxニュースによると、トランプ政権はCBTC(※原文ママ。おそらくCFTCの誤記)の権限を拡大し、デジタル資産市場の大部分に対する規制権を与え、SECとCFTCの間の規制の重複や衝突を軽減することで、暗号市場により明確かつ安定した規制枠組みを提供しようとしている。これに対して、暗号市場の反応は非常に強いものだった。トランプ氏が11月の大選で勝利した直後、ビットコイン価格は急騰し、12月5日には初めて10万ドルを突破し、当日4%上昇して過去最高値を更新した。
過去に規制上の困難に直面しながらも、米国の暗号産業は依然として世界をリードしている。今後、トランプ政権の下で、米国暗号市場の規制構造は大きな変化を迎える可能性がある。支援的な規制措置によって、暗号産業の潜在能力がさらに解放され、米国はそのリーダーシップを一層強化し、世界の分散型金融(DeFi)の中核的存在となるだろう。
2. 18州によるSEC提訴の具体的な内容
トランプ氏の当選直後、わずか2週間後に18州が提訴したことは、ある意味で計算されたタイミングといえる。評論家の一部は、次期大統領のトランプ氏がすでにデジタル資産産業を全面的に支援すると公約し、暗号支持派の新SEC議長を指名したにもかかわらず、今回の訴訟は、退任目前の政権にメッセージを送るだけでなく、将来的なSEC議長がゲーリー・ゲンスラー氏のように産業に対して過剰な規制を敷かないよう牽制する狙いもあると考えている。
2.1 18州の訴えの概要
訴状において、18州はまず、デジタル資産産業の発展状況と州政府の基本的な規制モデルについて言及し、同産業および州の規制がもたらす積極的な効果を強調した。過去十数年で、デジタル資産産業は急速に成長し、多くの起業家や開発者を惹きつけ、時価総額は3兆ドルを超え、日々の取引高は数百億ドルに達している。また、銀行口座を持たない米国人に金融サービスを提供し、国境を越えた送金や慈善寄付の促進にも貢献している。各州は自主的な規制権を活用し、柔軟な規制枠組みを通じてデジタル資産産業の革新と発展を支援し、地域経済の成長を推進してきた。
次に、SECの規制権限と規制姿勢を分析した。「1933年証券法」と「1934年証券取引法」は、SECに証券に関する規制権を付与している。ある資産がハウイテストにより「投資契約」と認定されれば、それはSECの管轄下に入る。しかし、一般的にデジタル資産は「投資契約」の基準に適合しない。なぜなら、それらの取引には、投資家と発行者との間に継続的な義務関係が欠如しているからである。SECは、デジタル資産産業の初期段階において、繰り返し「デジタル資産自体は通常証券ではなく、二次市場での取引も証券取引に当たらない」と公言していた。ところが、ゲーリー・ゲンスラー氏がSEC議長に就任して以降、SECは産業に対する限定的な監督から大規模な執行活動へと方針を転換し、法律の拡張的解釈を通じてデジタル資産分野での権限を拡大しようとしている。この変化は、州の規制権を脅かすだけでなく、産業に不確実性をもたらし、法的に不当な扱いを受ける結果となっている。
同時に、SECの現行「暗号政策」(Crypto Policy)に対して法的疑義を呈し、SECによる証券法の解釈は文言、歴史、先例、常識に反しており、「重大問題の原則」(Major Questions Doctrine)に違反していると主張。また、SECの執行活動は「連邦行政手続法」(Administrative Procedure Act、APA)に違反しており、SECの全体的な暗号政策は各州の権益を侵害し、産業の利益を深刻に損ない、発展を阻害していると訴えている。
最後に、裁判所に対して二つの主要な救済請求(Claim for Relief)を提起している。第一に、SECの暗号政策は権限を超えており、「違法な行政行為」であるとして、裁判所がその政策を違法と宣言し、今後SECがその政策に基づいてデジタル資産プラットフォームに対して執行活動を行うことを禁止すべきである。第二に、SECの暗号政策は行政手続に違反している。SECは政策を策定する際に必要な手続を遵守しておらず、APAに違反しているとして、裁判所がその政策を無効とし、違法であると宣言すべきである。
2.2 SECの違憲の根拠
具体的な違憲の観点から見ると、18州は主に米国憲法第一条および第十修正案を根拠に、SECによる暗号産業の規制が米国憲法に違反していると主張している。
米国憲法第一条に基づき、18州はSECの行為が法定権限を越え、立法権を侵害し、三権分立の憲法原則を破壊していると主張する。米国憲法第一条は、「合衆国に対するすべての立法権は、上院および下院で構成される議会に属する」と規定している。しかし、一方で、規制ルールの制定において、SECは「立法ではなく執行」を通じて広範なデジタル資産規制ルールを事実上制定しており、国会に専属されるべき立法権を行使している。SECは国会の承認や正式なルール制定手続きを経ず、単独で権限を拡大しており、三権分立の憲法原則を損なっている。他方、執行実務において、SECは「1933年証券法」と「1934年証券取引法」に定義される「証券」の範囲を拡大し、多数のデジタル資産(例えば暗号通貨)を規制対象に含めているが、これら資産は実際には国会が制定した現行法体系に含まれていない。SECによるこれらの資産への規制は、国会からの明確な権限付与を欠いており、法定権限を逸脱している。
米国憲法第十修正案に基づき、18州はSECの行為が各州のデジタル資産に関する権限および自律性を剥奪し、連邦と州の間の権力分配を破壊していると主張する。第十修正案は、「合衆国憲法が合衆国に付与せず、かつ各州の行使を禁止していない権力は、各州または人民に留保される」と規定している。国会の承認を得ずに、SECはルール解釈および執行活動を通じて、ほぼすべてのデジタル資産取引を連邦証券法の規制範囲に組み込んでおり、直接的に各州の自主的規制権を弱体化させている。同時に、SECの一元的規制は、地方自治体による独自規制の発展を抑圧し、各州が自らの経済・社会的ニーズに応じてデジタル資産規制を模索する余地を制限しており、連邦制の本来の趣旨に反している。さらに、一部の州は税制優遇措置などを通じて投資を誘致し、暗号産業の育成を目指しているが、SECの強硬な規制がこうした産業の州内立地を妨げており、州の経済的利益を侵害している。
2.3 まとめ
本件訴訟の中心は、依然として暗号資産の定性と規制の強度である。18州は、SECが大多数のデジタル資産の二次取引を「1933年証券法」と「1934年証券取引法」に基づく「投資契約」と一括して認定し、それらを証券と見なし、その取引を仲介するプラットフォームに証券法の遵守を求める政策は、SECの法定権限を越えており、各州の主要な規制権を違法に剥奪するとともに、デジタル資産経済全体に損害を与えていると主張している。
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