
許倬雲:ビットコインの出現は、まるで魔法使いが仕掛けた賭けのようだ
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許倬雲:ビットコインの出現は、まるで魔法使いが仕掛けた賭けのようだ
魔法使いが自分の杖をいじっている。
著者:許倬雲
本稿は2020年4月に公開
アメリカではすでに非常に普及しているクレジットカード制度。クレジットカードの普及は貨幣流通量にも影響を与えている。貨幣の流通が迅速になるため、発行量が安定していても、流動速度が速くなることで、事実上貨幣供給量が数倍に相対的に増加したのと同じ効果がある。

世界初のクレジットカードはフランク・マクナマラが発明
私の記憶では、第二次世界大戦以前にはクレジットカードはそれほど普及しておらず、銀行と特別な関係を持つ個人や企業のみが信用状を使って支払いを行い、その後銀行が支払うという形態だった。
当時最も有名なカードはおそらく三種類で、一つは裕福な商人たちが高級ホテルやレストランなどで客をもてなす際に使う「ダイナーズクラブ(Diners Club)」であった。もう一つはより派手なもので、「ブランクカード(Card Blanc)」と呼ばれ、カード所有者が任意の金額を記入し、相手が銀行から回収できるというものだった。
第三に、アメリカで広く使われた「アメリカンエキスプレス(American Express)」があり、これはカード所有者がアメリカの電信会社と契約し、旅行者が外出先でいつでもこのカードで支払いを行い、現地の電信会社が立て替え、月末に精算する仕組みだった。

American Express
これらのカードは特権階級や特別な身分を持つ者のみが利用できた。会費もかなり高額だった。数量が少なく、各カード保有者は銀行に相当な預金を持っており、支払いを拒否する心配がなかったため、これらのカードの運用は全体の貨幣流通量に影響を与えることはなかった。
第二次世界大戦後、アメリカ経済は繁栄し、特に1950年代には道路網が整備され、航空産業も急速に発展したため、旅行者が旅先での利便性のためにカードを持つことを好むようになった。そのため、前述の限定的なカード以外に、各銀行が次々とクレジットカードを発行し、百貨店や石油会社までもが同様のカードを発行するようになった。
カードの普及はさらに進み、大学のような大きな組織も銀行と提携してクレジットカードを発行し、特定の教職員が買い物の際、そのカードで掛け払いができることを認めるようになった。

制服を着たハーバード大学の学生
クレジットカードの乱発は危機を引き起こした。一部の人間が多額の支出を行いながら即時に返済せず、逃げてしまうケースが続出した。カードの発行が極めて容易であり、多くの発行機関が申請者の信用調査を適切に行わなかったことにより、さらなる問題が生じた。
あるカード保有者は、カードの延滞に対する利息が19~20%以上かかることを承知しながらも、別のカードを新たに申し込んで、前のカードの債務を返済するような行動に出る。
1980年頃によく見られた光景として、一人の財布の中に十数枚、あるいは二十数枚のカードが入っており、「カードでカードを養う(以卡養卡)」という状況があった。最終的には膨大な負債を抱え、カード保有者が行方をくらましたり破産を申請したりすることで、すべての借金が帳消しになってしまう。
こうした問題に対処するため、現在のクレジットカード制度は二つに分けられている。一つは従来型のクレジットカード、もう一つは前払い式のプリペイドカードである。後者の場合、使用額は銀行口座から直接差し引かれ、決済時に端末がその口座に十分な残高があるか即座に確認する。このような仕組みにより、いわゆる「カードの使い過ぎ(刷爆)」は比較的少なくなった。
しかし、多数のカードが市中に流通しており、カード利用から支払いまでの期間は通常一か月程度ある。この期間中の空白を、多数のカード利用量から換算すると、実際の貨幣流通量の数倍に相当する信用が市場に流れていることになる。
このようなインフレーションは実は管理が難しく、表面上は景気を促進しているように見えるが、実際には無制限なインフレの深刻さを隠している。以上のクレジットカードに関する問題は、今日の通貨がかつて政府が保証していた安全性からすでに離れてしまっていることを反映している。

多数のクレジットカードの流通はインフレを引き起こす可能性がある
通貨自体が信用という形で市中に数倍に膨張しており、それを抑制できる存在はない。一国の経済、あるいは市場経済はほとんど空虚な泡沫の上に成り立っている。こうした泡沫は貨幣の生産量を刺激し、過剰生産を招き、支払い不能の窮地に陥る。もし管理しないまま、巨大な泡沫が崩壊すれば、経済は崩壊する。
最近また新たな現象が現れ、仮想の記号が実質的な通貨に代わっている。2017年11月19日、シカゴのMerchandise Marketは「ビットコイン(Bit Coin)」を正式な交換手段として採用すると発表した。
いわゆるビットコインとは、各国通貨の為替レートを計算するコンピュータプログラムの中で特別に設計された仮想単位である。この単位の価値は非常に小さく「bit」と呼ばれる。このプログラムを通じて、世界各国の通貨を換算する際に常に為替基準を得ることができる。この計算基準は仮想単位であり、どの国のかの通貨でもなく、いかなる債務の支払いにも使用できないものだが、今や売買可能な「商品」となっている。

世の中には元々ビットコインなど存在しないのに、投資対象になってしまった
市場においてビットコインの価格は常に上下し、非常に敏感である。これを利用して投機を行う者も多く、ある瞬間にいくらかのビットコインを買い、次の瞬間にいくらかを売る。こうなると、取引の対象となるのは本来の独立した価値を持つ製品ではなく、その裏にある信用によって支えられているわけでもない。
世の中に実在しないビットコインという仮想単位が、何の実体もないまま交換や投資の対象となる。現代の経済がここまで来てしまったということは、確かに生産と消費の関係から離れており、市場は賭博場となり、経済はギャンブルと化している。
これは私たちが理解する資本主義ではなく、通貨の積み上げによる幻想である。しかし、利益が出るため、人々はその中で波風を立てようとする。人間が作り出した幻想が、本来自律的に均衡を保つべき経済にまで影響を及ぼしている。我々が言えるのは、魔法使いが自分の魔法の杖を弄んでいるということだ。

魔法使いが自分の魔法の杖を弄んでいる
アメリカの経済発展は、未開拓地の開拓、農産物の増産、購買力の拡大から始まり、工場を設立し、鉄鋼や機械といった基本的な原材料を生産し、最後に日常消費財を生産するというプロセスを経てきた。このような資本主義的生産方式では、通貨を使って設備や労働の費用を支払い、輸送や土地取得などのコストも加わる。
この生産コストに、一定期間における初期資本が得るべき利息を加えたものが、消費財の価格となる。投資家は利益を得るが、それは利息として表される利益である。
生産ラインの作業員から、顧客の商品を包む販売員に至るまで、この連鎖上の多くの労働者が賃金を受け取る。これが正統な資本主義であり、生産体系と交換体系が経済制度を構成している。

アメリカの食肉処理ラインの作業員
今日、100年以上の変遷を経て、高度な工業化と科学技術の研究成果による生産方式の継続的な刷新が行われてきた。これほどの制度的優位性を持つ現代工業文明が、一体どうして虚偽の泡沫に満ちた信用経済に陥ってしまったのか!
信用経済は膨張を続けながら繁栄を維持し、欲望を刺激して消費量を増やし、その流通速度が不十分でないかと恐れている。上述の諸行為はこの泡沫を維持し、拡大し続けている。経済理論がいかに巧妙に説明しても、常識的に考えれば、この制度の体質は堅実ではない。

トランプの「アメリカ第一」は夢ではないのか?
経済グローバル化の時代、他の地域の経済体制は成長とともにますます充実している一方、アメリカはますます空洞化している。アメリカの経済的覇権がどうして長続きするだろうか?トランプはこの現象を理解していないのに、「アメリカ第一」の復活を唱える。これは夢ではないのか?
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