
数千億ドルの米国債が「暗号資産の受け皿」を見つけようとしている今、我々はまさにドル2.0の誕生を目撃している。
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数千億ドルの米国債が「暗号資産の受け皿」を見つけようとしている今、我々はまさにドル2.0の誕生を目撃している。
《GENIUS法案》は、米国のステーブルコイン市場に初めての連邦規制枠組みを確立することを目指しており、失敗から超党派の妥協に至る劇的な展開を経てきた。
執筆:White55、火星財経
一、立法プロセス:「死にかけ」から「復活」への劇的な転換
2025年5月から6月にかけて、米国上院が《GENIUS法案》(正式名称『アメリカの安定通貨革新を指導し確立する法案』)を巡って繰り広げた攻防は、政治と金融が交錯する壮大な戦いだった。2500億ドル規模のステーブルコイン市場に初めて連邦レベルでの規制枠組みを設けることを目的とするこの法案は、「手順上の死亡」という危機から「与野党妥協」という奇跡的復活を遂げ、最終的に68対30という投票結果で上院全体会議の審議段階へ進出することになった。しかし、この勝利の裏には数か月にわたる与野党間の利益交換、業界大手企業によるロビー活動、そしてトランプ一族の「暗号資産金脈」を巡る倫理的論争が潜んでいた。
タイムラインの振り返り:
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2025年3月:共和党上院議員ビル・ヘイガーティが法案の最初の草案を正式提出。支払い用ステーブルコインに対して「連邦+州」の二元的規制体制を構築することが目的。
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5月8日:法案に対する初の手順的採決が48対49で意外にも失敗。民主党が「トランプ一族の利益相反問題」を理由に集団離反した。
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5月15日:与野党が緊急協議を行い、トランプ一族の暗号関連事業を直接的に制限する条項を削除した修正案を提示。これにより民主党側の一部支持を得ることに成功。
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5月20日:修正案が66対32で重要な「討論終結動議」(クォーラム投票)を通過し、立法上の障壁を排除。
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6月11日:上院が68対30という圧倒的多数で法案を可決。最終審議および修正手続きへ移行。

上院多数党院内総務ジョン・トゥーン氏が水曜日に演説し、《天才法案》の可決に賛成するよう呼びかけた。出典:アメリカ上院
こうした一連の展開の核心は、共和党が巧みにこの法案を「米ドルのデジタル覇権確保」の戦略的手段として包装したことにある。一方、民主党も「規制の空白が金融リスクを招く」との懸念から内部に意見の揺らぎが生じた。上院多数党院内総務ジョン・トゥーン氏のロビー活動における言葉は極めて煽動的だった。「もし米国がステーブルコインのルールを主導しなければ、中国がデジタル人民元でその空白を埋めてしまうのだ!」
二、主要条項:規制の青写真と「悪魔のディテール」
《GENIUS法案》の規制設計は、「革新促進」と「リスク回避」の狭間を綱渡りしようとしており、その骨子は以下の6つの柱に要約できる。
二重規制と発行要件
発行額が100億ドルを超えるステーブルコインは連邦政府(通貨監理庁OCC)が管轄し、それ未満は州の規制を選択できるが、州基準は連邦と一致しなければならない。この設計は各州の自主性を尊重しつつ、大手企業に明確な線引きを行うものであり、Circle(USDC)やTether(USDT)に対する事実上の保護措置と見なされている。
1:1準備金と資産分離
現金や短期米国債などの高流動性資産による完全担保を義務付け、準備資産は運営資金と厳密に分離しなければならない。これは2022年のTerra崩壊事件への直接的な対応策だが、準備金にマネー・マーケット・ファンドなど「リスク資産」の含有可能性を認めている点が「地雷を仕掛けている」と批判されている。
テック大手への「緊箍児」
MetaやGoogleといった非金融系テック企業がステーブルコインを発行する場合は、新たに設立される「ステーブルコイン認証審査委員会(SCRC)」の承認が必要となり、データのプライバシー保護や独占禁止法上の要求を満たさなければならない。この条項は、トランプ氏の盟友であるマスク氏(Xプラットフォームのステーブルコイン計画)に対する「特定攻撃」と解釈されている。
消費者保護と破産時の優先権
発行体が破産した場合でも、ステーブルコイン保有者は資産の優先的償還を受けられ、準備金は破産財団に含まれない。ただし民主党は、この仕組みは従来の銀行に対するFDIC保険制度より弱く、「資金凍結リスク」があると指摘している。
マネーロンダリング防止と透明性
ステーブルコイン発行体を《銀行機密法》の適用対象とし、KYC(顧客確認)や疑わしい取引の報告などを義務化。しかし、抜け穴として、分散型取引所(DEX)は規制対象外となっており、違法資金の流れを許す余地を残している。
大統領家族の「免除ループホール」
議員や大統領の親族がステーブルコイン事業に参加することを明確に禁止しておらず、トランプ一族が関係するWorld Liberty Financial(WLF)が発行するUSD1ステーブルコイン(時価総額20億ドル)が事実上合法化される。民主党のウォーレン上院議員は怒りを露わにし、「これはトランプの『暗号腐敗』に道を開くことになる!」と非難した。
三、論争の渦中:トランプの「暗号金鉱」と与野党の分裂
法案推進の最大の障害となったのは、政策の詳細ではなく、トランプ一族が暗号産業に深く関与していることによる利益相反問題であった。以下の3つの論点が政治的駆け引きを最高潮に引き上げた。
USD1ステーブルコインの「合法化による裁定取引」
WLFが発行するUSD1はすでにアブダビの投資会社を通じてバイナンスに20億ドルを投入しており、トランプ一族は取引手数料によって年間8000万ドル以上を稼ぐことが可能となっている。さらに致命的なのは、法案成立後、USD1は自動的に連邦レベルでの承認を得ることになり、時価総額が100億ドル規模まで跳ね上がる可能性がある点だ。
「有料面会」の倫理的危機
トランプ氏はMemeコイン(例:TRUMP Coin)の販売を通じて保有者に「大統領晩餐会」への参加資格を提供しており、民主党からは「国家権力を証券化している」と強く非難されている。ジェフ・マーカリー上院議員は、「これは史上最も露骨な金銭と権力の取引だ!」と断じた。
立法権と行政権の「回転ドア」
法案の中心起草者の一人である共和党上院議員ヘイガーティが、WLFとの政治献金関係にあることが判明した。民主党は公職者がステーブルコイン事業に参加することを禁止する修正案を提出したが、共和党の集団的抵抗により阻止された。
5月15日に与野党が妥協し、トランプ氏を直接的に標的にする条項を削除したものの、ウォーレン氏らは上院で「最後の戦い」として、トランプ一族とWLFの資金の流れを公開するよう求め続けている。この倫理的攻防は、実質的には2026年の中間選挙の前哨戦なのである。
四、市場への影響:コンプライアンス紅利と「寡頭時代」の到来
《GENIUS法案》が最終的に施行されれば、ステーブルコイン市場に構造的な再編が起きるだろう。
トッププレイヤーの「楽勝」
USDC(Circle)とUSDT(Tether)は既に短期米国債を中心としたコンプライアンス準備金体制を整えており、連邦ライセンスを直ちに取得できるため、中小規模の発行事業者をさらに圧迫する。ゴールドマン・サックスは、両者の市場シェアが現在の94%から98%まで上昇すると予測している。
伝統的金融機関の「横断的収奪」
モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴなど既存の金融機関はすでに「限定目的ステーブルコインライセンス」の申請を開始しており、ブロックチェーン上での決済サービスを通じて暗号取引所の市場を蚕食しようとしている。また法案中の「保険会社がステーブルコインを発行できる」という条項は、伝統的大手企業にとって新たな扉を開くことになる。
米国債危機の「薬」か「毒」か?
法案はステーブルコインの準備金を米国債主体とすることを求めており、短期的には米国債の流動性危機を緩和する効果があるかもしれない。しかし長期的には「期間不一致」(期限ミスマッチ)の問題を悪化させるリスクがある。投資家が短期国債ばかりを好むようになり、長期国債の需要が減少すれば、財政赤字のさらなる拡大につながる恐れがある。
世界規制の「ドミノ効果」
欧州連合(EU)、英国、シンガポールはすでに《GENIUS法案》を参考に自国の政策見直しを表明しており、「米ドルステーブルコイン同盟」の形成が進んでいる。人民元や円のステーブルコインは、国際的な送金市場から排除される可能性があり、世界的な通貨秩序の再編が進行する。
五、今後の闘い:下院での攻防とトランプの「最終判断」
上院での承認は得られたが、法案はまだ以下の3つの関門を突破しなければならない。
下院での「簡易通過」
共和党は下院を220対215で支配しており、単純過半数(218票)で可決できる。しかし下院版の《STABLE法案》は上院版と重要な相違点がある:前者は規制権を完全に連邦に帰属させ、テック企業のステーブルコイン発行を禁止している。両院間の調整は8月の休会前まで持ち越される可能性がある。
大統領の「利害の天秤」
トランプ氏は公式には法案を支持しているが、その家族の利益は立法内容と深く結びついている。もし民主党が下院で「汚職防止修正案」を推し進めれば、大統領が拒否権(Veto)を行使し、法案が頓挫する可能性もある。
司法の挑戦という「グレーライノ」
アメリカ憲法の「報酬条項」(Emoluments Clause)は大統領が外国政府から利益を得ることを禁じており、USD1のユーザーの20%が制裁対象国(イラン、北朝鮮など)に所在していることから、最高裁判所が介入するリスクがある。
六、結語:暗号時代の「ドル覇権2.0」
《GENIUS法案》の究極の狙いは、単に市場を規制することではない。それは、ドルの覇権をブロックチェーンの遺伝子に組み込むことにある。米国債とステーブルコインを一体化させることで、アメリカは「デジタルドル帝国」を築こうとしている。世界中でのあらゆるブロックチェーン上取引が、無形のうちにドルの基軸通貨的地位を強化していくのだ。しかし、この賭けには巨大なリスクも伴う。もしDeFi(分散型金融)がコンプライアンス型ステーブルコインを回避したり、中国がデジタル人民元の国際化を加速させたりすれば、この法案は「紙の城」に終わるかもしれない。
政治家の駆け引き、利害集団のロビー活動、技術革命の波――歴史の三叉路に立つ今、GENIUS法案の最終的な運命は、次の10年間の金融秩序を誰が支配するかを決定づけるだろう。
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