
マスクは南アフリカから来て、また南アフリカへ戻った
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マスクは南アフリカから来て、また南アフリカへ戻った
マスクは星と大海を求めているが、人類が望んでいるのは安楽であり、死ぬまで安楽に暮らすことなのだ。
執筆:サヤ
こんなに大きく、そして美しい。マスクはいつかその日を迎えるだろう。
実際、トランプはマスクに対して非常に手厚い対応をした。3月、アメリカの圧力を受け、南アフリカの土地改革は事実上ストップした。もともと南アフリカは、白人農場主から30%の土地を「無償」で黒人に移転する計画だったのだ。
さらにアメリカは、南アフリカが主催するG20会議への出席を拒否し、「白人に対するジェノサイド(大量虐殺)の疑いがある」という理由を挙げた。これは大航海時代以来初めての「白と黒の逆転」であり、世界に少なからぬ衝撃を与えた。あまりにもナンセンスな光景だ。
だが実際、トランプの関心は外政ではなく、国内の民主党との戦いにある。彼が異常に南アフリカにこだわるのは、決して南アフリカの白人の運命を気遣っているわけではなく、政治的後援者への恩返しにすぎない。
トランプの一貫したスタイルは、支持者の約束は全力で果たすということ。ましてやマスクへの約束なら、なおさら命をかけてでも守る。米国の対外関係を犠牲にしても実行する。
本当に、泣けてくるよ。
トランプは南アフリカを憎んではいない。彼はただ、お金を稼ぎたいだけだ。しかしマスクは、白人が支配していた南アフリカの崩壊を今も引きずっている。彼の頭の中では、今日の南アフリカこそが明日のアメリカの姿なのだ。だからこそ、それを阻止することが自分の使命だと信じている。
すべての焦点は「ビッグ・アンド・ビューティフル法案」(BBB、One Big Beautiful Bill Act)にある。「3B法案」は、トランプとマスクが決裂した直接の引き金ではない。むしろ、両者の路線対立の結果なのである。
マスクにとってみれば、「3B法案」は「2B」より「1B」多いという愚かな選択だ。貧富の格差拡大などどうでもいい。そもそもマスクは超富裕層だし、ガソリン車への補助もまあ許容範囲だ。なぜなら彼のビジネスはテスラだけではなく、スペースXも政府契約をもっと取れるからだ。
だがマスクが真に問題視しているのは、トランプ陣営による財政規律の放棄と破壊である。
「ビッグ・アンド・ビューティフル」と名前は立派だが、中身は老朽化・陳腐化している。その根幹は2017年の『減税と雇用法案』(Tax Cuts and Jobs Act of 2017)とまったく同じで、レーガン政権が1980年代に行った経済刺激策の焼き直しだ。
しかし、法案は似ていても、アメリカはもう違う。
レーガン時代のアメリカは産業撤退の初期段階だった。つまりまだ工業があったのだ。今のアメリカは完全に非産業化が進んでいる。この状態で減税と経済刺激を続けるなら、米国債の暴騰、株式市場のバブル、ドルのインフレが避けられない。
トランプには関係ない。彼は「張り子の虎」で構わない。アメリカが継続できればそれでよい。だがマスクにとっては重大な問題だ。アメリカは真剣に経済を立て直すべきなのだ。

画像説明:トランプがローンを完済、出典:ブルームバーグ
マスクは成功した実業家だ。政治的にトランプに賭ける以前から、複数の商業分野で実績を証明している。一方、トランプは何度も破産を繰り返し、ようやく第2期政権で「発行通貨で投資家を刈り取り」、ようやくビルのローンを返済できた。
「3B法案」が成立すれば、今後アメリカは少なくとも3兆ドル以上の国債を追加発行することになる。これはマスクが主張する「政府支出削減」と正反対であり、米国債はますます収拾不能になり、MMT(現代貨幣理論)の発動か連邦政府の破綻か、いずれかの道を歩むことになる。
多くの人々が「ステーブルコインが救世主になる」と考えるが、それは現実的ではない。単純な話、米国債はあまりにも膨大すぎる。数十兆ドル規模の債務に対し、2500億ドルのステーブルコイン発行量では到底足りない。仮に現行発行量を10倍に増やしても、国債の利払いすらまかないきれない。
トランプが暗号資産関連規制を緩和するのは、複雑な経済戦略のためというより、むしろロビイストグループへの直接的な見返りに近い。最後の瞬間、コインベースなどの新興勢力、ピーター・ティールらシリコンバレーの右翼たちが次々とトランプ支持を表明したのだ。
これは明白な政治的取引であり、トランプが巧妙に仕組んだ大局などではない。
マスクが白人が南アフリカを失ったことを未だに忘れられないのなら、白人がアメリカを失う未来にどうして無関心でいられるだろうか?
だからこそマスクは必死になって「3B法案」の成立を阻止しようとする。ついには「政府からの離脱」を宣言し、企業家としての立場に戻った。これに対しトランプは「お前はアメリカに何の功績がある? DOGEを配っただけでNASAの大契約を貰うのか?」と皮肉り、まるでルーブウェイと秦の始皇帝の物語を再現した。
こうして、実業家と政治家の「親密→恋愛→憎悪→決別」というドラマは、10年も20年もかからず、わずか数ヶ月で終わってしまった。
だがマスクの商人としての思考がすべてを救う。彼がトランプに賭けたのも、本気で命をかけるつもりではなく、あくまでビジネスのためだった。商人は政治にAll inできない。マスクには実際に数千億ドルの資産と複数の大企業があるが、トランプはすでにすべてを賭けている。勝つか、そうでなければ刑務所行きだ。
民主党の政治的報復? 無効だ。私は依然としてホワイトハウスに再入庁する。
イエメンのフーシ派に軍事的に勝てない? 忍耐だ。それでも私はウクライナ・ロシア、イラン・イスラエルの仲介ができる。
東アジアでの関税問題が解決しない? 続けろ。それでも私はベトナムで勝てる。

画像説明:称賛のメロディ、出典:@elonmusk
マスクは口では新政党(The American Party)を立ち上げ「新しいアメリカ」を作ると語っているが、実際にはすでに静かに姿勢を下げ、商人本来の姿に戻りつつある。AGI(xAI)、ロケット、自動車に再び注目し始めている。補助金があろうとなかろうと、ビジネスは続けなければならないのだ。
とはいえ、我々が生きる時代は資本主義の全盛期だ。「ジャック・マーはどこにいる?」という問いかけも、いつか自分に跳ね返ってくるだろう。だが結局のところ、ジャック・マーですら人身の自由と財産の自由は保っている。資本主義の心臓部にいる以上、マスクが銃弾を8発受けることはなく、せいぜい乾杯の場で一喝される程度で済むだろう。
真の危機はこれからだ。マスクの「産業資本家」としての立場は、あとどれくらい持つだろうか?
これは皮肉な話だが、実はマスク自身、実業家になることを余儀なくされた存在だ。2000年代初頭、ピーター・ティールのPayPalと競合して以来、マスクのX.comは「ワンストップ金融資産管理プラットフォーム」を目指していた。後に買収したTwitterを改名したのも、その延長線上の戦略だった。だが今、ティールの新デジタル銀行Ereborはすでに運用開始を控えているというのに、マスクはまだスターシップのことで頭を悩ませている。
Ereborは、SVB(シリコンバレーバンク)破綻後の市場空白を埋め、暗号資産企業向けのサービスを提供する計画だ。
あるいは、私たちはマスクを誤解してきたのかもしれない。かつてマスクは、火星や月へ向かうことが地球を離れユートピアを築く正しい道だと考えていた。だが人類のイデオロギーと政治的対立はその後を追って来る。どこへ逃げても逃れられない。ピーター・ティールを例に取れば、彼の率いるPalantirはすでに重要な防衛請負業者となり、闇の中で静かに巨額の利益を得ている。
「ビッグ・アンド・ビューティフル法案」の議会審議の際、ティールが支援した元議員で現副大統領が決定的な一票を投じた。一方、マスクはツイッター上でアメリカと自身の未来について憂いているしかできなかった。
商売に勝てなければ、すべてはゼロに等しい。
権力は、その権力の源泉にのみ責任を負う。トランプはマスクに真剣になる必要はない。マスクがいなくても、ネスクもブースクも他にいくらでもいる。多くの実業家がマールアゴ莊園で「入閣」を待っている。だがマスクのキャッシュフローが途切れれば、鍋も碗も空っぽになり、南アフリカへの帰還を待つしかない。
マスクは星と宇宙を求めている。だが人類はただ安楽を求めている。死んでも手放さないほどに。
マスクの前半生は白人支配の南アフリカの終焉を体験した。後半生では、白人支配のアメリカの衰退を目の当たりにするかもしれない。そして最終的には、人類の怠慢と不進歩を目の当たりにし、地球に閉じ込められたまま滅びるのを見るのだろう。
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