
トランプ氏の暗号資産プロジェクト、1日で1000万ドルを調達
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トランプ氏の暗号資産プロジェクト、1日で1000万ドルを調達
資金調達と票の両面作戦。
執筆:陀螺財経

トランプ、また新策を打ち出す。
10月15日、トランプ一家が手掛けるDeFiプロジェクト「World Liberty Financial」のトークンWLFIが正式に一般販売を開始した。これに先立ち、プロジェクト側は約2か月間にわたり宣伝活動を展開。トランプ家4人全員が登場し、本人も複数回SpaceやX(旧Twitter)で支援を呼びかけるなど、もはや新たな暗号資産(クリプト)アンバサダーと化している。
しかし、目標とする資金調達額が約3億ドルであるのに対し、初日の販売額は1000万ドル余りにとどまり、目標には程遠い結果となった。市場は「口先だけ」の約束に対してすでに鈍感になっており、トランプへの賭けも後退傾向にある。ましてやこのプロジェクトには前々から「コネ人事」といった批判もあった。
一方で、大統領選まであと20日という時期に、なぜ今このタイミングで暗号プロジェクトが登場したのか。そこに別なる意味が込められているようにも思える。
10月15日、「World Liberty Financial」のトークンWLFIが正式に上線し、ホワイトリストユーザー向けの一般販売が開始された。前日にはプロジェクト側がライブ配信を行い、「10万人以上が資格を満たすホワイトリストユーザー」と発表した。
このプロジェクトの歴史を振り返ると、実は2か月前から準備が進められていた。まずトランプ次男のエリック・トランプが突如「DeFiが好きになった」と投稿。続いて長男ドナルド・トランプJr.が「DeFiこそ未来」と支持を表明。8月16日には長男がTelegramチャンネル「The DeFiant Ones」を開設し、以降も度々情報を予告して市場の関心を煽った。
そして8月29日、ようやくプロジェクトの正体が明らかに。エリック・トランプが「World Liberty Financial(WLFI)」のローンチを発表。当然ながらドナルド・トランプ氏も加勢し、関連動画を投稿するとともに、「米国をクリプトの都にする」というスローガンを再び掲げた。

一見「金融の力を人々に返す」と崇高な理念を掲げるものの、実際にトークンが発行された今でも、公式のホワイトペーパーは未だ公開されていない。代わりに提示されているのは「ゴールデンペーパー(黄金論文)」と呼ばれる紹介文のみであり、技術的詳細や運営方法については不明瞭なままだ。The Blockが入手したロードマップとゴールデンペーパーを統合すれば、プロジェクトの輪郭がわずかに見えてくる。
World Liberty Financialは、Steve Witkoff、Zach Witkoff、Folkman、Chase Herroの4名が共同創設。規制対応型のワンストップ代替金融プラットフォームを通じて、デジタル資産の大規模採用を推進することを目指している。ユーザーはここで暗号資産の貸出・借入、流動性プールの作成、ステーブルコイン取引などが可能になる。トランプ一家は深く関与しており、ドナルド・トランプ氏はホワイトペーパー案において「最高暗号資産擁護者(Chief Crypto Advocate)」と称され、二人の息子は「Web3アンバサダー」、末息子は「DeFiビジョナリー(DeFi遠見者)」とそれぞれ役職を与えられている。
ロードマップによれば、プロジェクトは三段階で進行する。第1段階ではイーサリアム拡張ソリューション「Scroll」上で、Aaveベースの暗号バンキングプラットフォームを構築する計画で、すでに始動済み。第2段階は取引所との連携強化で、KYCプロトコルによるオンチェーン証明を通じて消費活動を可能にする。具体的には、ステーブルコインに重点を置いたクレジットカードの発行を計画している。最終段階ではリアルワールドアセット(RWA)の細分化、つまり不動産などの資産をトークン化する――これはトランプ家の本来の事業領域でもある。
プロジェクトの内容は曖昧だが、トークン分配は比較的明確だ。総供給量の63%を一般に販売し、うち17%はユーザーリワード、20%はチームに割り当てる。今回の初期販売では3億ドルの調達を目指しており、完全希薄化時評価額15億ドルで20%のトークンを販売する。総トークン数は200億枚。SECの規制を回避するため、販売は「Regulation D」に基づき、販売規模を制限し、適格投資家に限定。また、二次譲渡は禁止されるが、トークン保有者はプロジェクトのガバナンス投票権を持つ。
初日の販売状況を見ると、10月16日午後3時30分時点で約7.3053億枚のWLFIが販売され、残りは192.69億枚。単価0.015ドルで計算すると、売上高は約1095.79万ドル。全く新しいプロジェクトとしてはまずまずの数字だが、当初の3億ドル目標と比べれば、依然大きく水をあけている。

ではなぜ市場が冷ややかな反応を示しているのか。理由は明白だ。譲渡不可かつホワイトペーパーもないプロジェクトに巨額投資するのはリスクが高すぎる。それに加え、プロジェクト自体にも問題点が多い。
まずチーム構成だ。トランプ一家が全面的に参加しているとはいえ、彼らは伝統的な不動産王族であり、暗号資産に関する経験は皆無。ホワイトペーパーでの肩書きも「象徴的存在」としての色が強く、影響力を利用して収益を得る構図が透けて見える。実際の運営は共同創設者たちに委ねられている。
その中でも、FolkmanとChase HerroはDough Finance出身。同プロジェクトは2024年4月にAAVE上に構築されたDeFiプロジェクトだが、7月12日にフラッシュローン攻撃を受け200万ドルを盗まれ、現在はほぼ停止状態。こうした前科があるため、市場ではWLFIがDough Financeのコードをそのまま流用するのではないかと懸念されており、セキュリティリスクが指摘されている。さらにFolkmanは「美女とのデートを成功させる講座」を販売していた過去があり、専門性や信頼性に疑問符が付いている。
Chase Herroも劣らず、若かりし頃は薬物関与で服役経験があり、ダイエットサプリや即金ビジネス講座を販売。10年前には別の暗号資産取引サービス「Pacer Capital」を立ち上げたが、現在は存在しない。
実質的な運営陣の評判が地に落ち、トランプ一家は暗号知識ゼロ。しかもトークンは譲渡不可でガバナンス用途に限定。こうした状況下で、プロジェクトの真の目的が問われ始めている。
業界の分析筋によれば、このプロジェクトはトランプが新たな資金調達チャネルを拡大しようとする試みであり、言い換えれば「政治献金の裏ルート」の可能性が高い。この見方は根拠がないわけではない。民主党に比べて資金面で常に苦戦してきた共和党。連邦選挙委員会の資料によると、7月31日までの段階で、ハリス陣営は7.7億ドルを調達し、4.4億ドルを支出。トランプ陣営は5.7億ドルを調達し、3.1億ドルを支出した。最新データでは、7月1日から9月30日までの3か月間、ハリス陣営は6.33億ドルを調達。その金額とスピードは選挙史上でも稀なほどだ。一方のトランプ陣営は第3四半期で3.5億ドルにとどまり、差は歴然だ。
資金チャネルを見ても、ハリス陣営はCarey Committeeを通じて外部資金を集めており、こちらは「直寄付(direct donation)」機能を持ち、候補者や政党に直接資金を送ることができる。一方トランプ陣営はSuperPAC中心で、広告や宣伝などに無制限で支出できるが、候補者本人には直接送金できない。資金効率はハリス側が圧倒的に高い。
こうした背景を考えれば、選挙直前に急遽暗号チャネルを追加するのは極めて合理的な判断だ。トークン販売はまさに「短時間で大量の資金を調達する手法」であり、3億ドルもの巨額調達目標を掲げることにもつながる。そもそもガバナンストークンにすぎないプロジェクトが、販売開始と同時に3億ドルの目標を掲げるのは異常だ。もちろん、これはプロジェクトの成否がトランプの大統領選勝利と密接に結びついていることを意味しており、支援者にとってその後得られる利益の方が重要だということだ。現時点ではトランプ一家はこのプロジェクトに大きな期待を寄せ、特にステーブルコインという「クリプト界のキャッシュカウ」を狙っている。
一方で、このタイミングでの暗号プロジェクト発表は、トランプ自身のクリプト支持姿勢をより明確に示すものでもある。現実世界への反映として、これまで「空言」だったトランプの主張に信憑性を与える効果があり、暗号コミュニティからの支持を得やすくなる。
そのため、多少の政治的色彩を持つこのプロジェクトは広く支持されていないが、勝率という観点では状況が変化している。10月10日時点の世論調査では、ハリスが49%でトランプを2ポイントリードしているが、暗号予測市場では逆転している。トランプの勝利確率は58.9%に達し、ハリスを17ポイント差で引き離している。激戦州でも優位を取り戻しており、ミシガン、ペンシルベニア、ネバダの各州でリード。7つの激戦州のうち6州で先行しており、このままいけばトランプの勝利は目前だ。

注目すべきは、今回の選挙キャンペーンでトランプを強力に支援しているのが、暗号界の古参的朋友――エロン・マスクである。7月3日から9月5日までの期間、マスクはトランプ支持の政治行動委員会(America PAC)に7500万ドルを寄付。当初「毎月4500万ドル寄付」と宣言していたものの実際はそれを下回るが、それでもトランプ最大級の寄付者の一人となった。
奇妙なのは、2020年以前のマスクは、トランプがパリ協定から離脱したことに強い不満を示し、「民主党支持者」と公言していたことだ。2022年には両者がネット上で罵り合う事態に発展。マスクは公の場で「トランプは辞職すべき」と断言。これに対しトランプは「政府補助に依存する商人」と切り捨て、マスクが政府に支援を求めにホワイトハウスを訪れたことを辛辣に皮肉った。
しかし今年7月にトランプが銃撃事件に遭って以降、両者の態度は急変。敵対から鮮明な同盟へと転換した。8月にはマスクとトランプがSpaceで対談し、宣伝効果を狙った。100万人以上が視聴した。10月にはマスクがトランプの選挙集会に直接登場し、支援を表明。さらには「投票すれば47ドル支給」と宣言するなど、公然と買収行為に及んだ。巨額の寄付も含め、マスクは完全にトランプ支持に回った。
なぜ両者が和解したのか。マスク自身の説明では、現在の民主党の政策や価値観が自分と合わないと感じており、特に人種の多様性の推進が米国の分裂を加速させていると批判。またバイデン政権がクリーンエネルギーおよびEV化に消極的であること、SpaceXやX(旧Twitter)に対する取り締まり姿勢なども、共和党支持を固める要因となった。
さらに、政府契約や規制方向性への圧力だけでなく、マスク個人が政治に強い関心を持っていることも背景にある。そう考えれば、官僚体制から距離を置き、政治的基盤がまだ確立していないトランプを選ぶことは、商業的利益と政治的将来性の両面でマスクにとって好都合だ。実際、トランプは以前の立場を改め、EVを支持すると表明。就任後にはマスクを「コスト削減大臣(Minister of Cost Reduction)」に任命すると約束している。
だが、一度表明した立場にはもう戻れない。公人が政治的立場を明確にすれば、当然大きな危険と反作用が伴う。マスクも公言している通り、もしトランプが敗れれば、民主党からの報復が待っているかもしれない。場合によっては人身の安全さえ脅かされる可能性がある。こうした状況下で、自身の安全を守るためにも、全力での支援はむしろ当然の行動といえる。
政治に関わるすべての人物にとって、大統領選は究極の賭けだ。結果が出るまで誰も勝敗を語れない。表舞台の舌戦は序曲に過ぎず、血を見せない闇の駆け引きこそが真の戦場。政治家のあらゆる行動は、利益と票に基づいて行われる。
マスクの接近も、暗号プロジェクトの立ち上げも、すべてそこに帰結する。今回登場したDeFiプロジェクト「World Liberty Financial」が、果たして本当に暗号界に貢献するのかどうか。その答えは、もはや誰も気に留めないだろう。
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